減衰器・増幅器・その他測定用素子

減衰器・増幅器・その他測定用素子

減衰器(アッテネータ)とは信号を減衰させる機器、一方、増幅器(アンプ)は信号を増幅させるための機器です。いずれも減衰・増幅だけのシンプルな機能を持ちますが、電子計測や物理量計測の補助具として、なくてはならない重要な役割を果たします。

減衰器や増幅器、その他の測定用素子が果たす役割や仕組み、また、種類について解説します。測定用素子を活用することで得られるメリットや活用事例、よくある質問なども紹介するので、ぜひ参考にしてください。

減衰器・増幅器・その他測定用素子とは

減衰器(アッテネータ:Attenuator)や増幅器(アンプ:Amplifier)は、いずれも信号の物理量を変更する際に用いる機器です。電子計測や物理量計測などの測定用の機械に組み込まれていることや、各機器単独で利用されることがあります。減衰器と増幅器、その他の測定用素子の役割や仕組み、特徴などについて見ていきましょう。

減衰器とは

減衰器とは、信号を減衰する機能に特化した機器のことです。機能はシンプルですが、電子計測において、なくてはならない重要な役割を果たします。

なお、減衰器は電子計測以外にも、光などの物理量を計測する際にも用いられることがあります。また、光信号を減衰させる減衰器を「光アッテネータ」と呼び、電子計測の減衰器とは区別することが一般的です。

減衰器の仕組み

電気信号用の減衰器の内部は、抵抗器で構成されています。電気信号が抵抗器を通過することで減衰するというシンプルな構造です。

ただし、電気信号は抵抗器を通過する際に減衰しますが、抵抗値(インピーダンス)は変化しません。つまり、減衰器は定インピーダンス性を保証したまま、信号のみを減衰する機器といえます。

減衰器の特徴

減衰器には次の特徴があります。

  • 定インピーダンス性を保ったまま信号のみ減衰する
  • 周波数が変わっても減衰量は変化しない
  • 対応する帯域が広い

増幅器とは

増幅器とは、信号を増幅する機能に特化した機器のことです。例えば、センサからの信号が微小すぎて計測しにくいときなどには、増幅器を用いて信号を適度な大きさに増幅し、正確な計測を可能にします。

増幅器の仕組み

出力電圧は、電源電圧から抵抗の両端にかかる電圧を差し引いたものとして表されます。抵抗の両端にかかる電圧が大きくなると出力電圧は下がり続けますが、あまりにも抵抗の両端にかかる電圧が大きくなったときは内部に流れる電流が増えず、最終的には出力電圧がゼロに近づきます。

この仕組みを利用することで、入力電圧を増幅することが可能です。増幅器に信号(信号電圧)を入力すると増幅された状態で出力されるため、測定しやすさが向上します。

増幅器の特徴

増幅器には次の特徴があります。

  • 信号を増幅するが、雑音(ノイズ)も増幅する
  • 増幅器自体にも内部雑音がある

減衰器・増幅器・その他測定用素子の種類

減衰器や増幅器、その他の測定用素子の種類を紹介します。なお、測定用素子を取り扱うメーカーの中には、直接測定に関わる機器だけでなく周辺機器も測定用素子として紹介していることがあります。

減衰器の種類

減衰器には、次の種類があります。

  • ステップアッテネータ
  • アッテネータパッド

ステップアッテネータとは、信号の減衰量をスイッチで切り替えられる減衰器です。感度の高い計測器に大容量の信号を接続すると計測器が飽和しますが、減衰器につないで、ある程度信号を減衰させておくと、計測しやすくなります。

一方、アッテネータパッドとは、信号の減衰量があらかじめ決まった減衰器のことです。固定アッテネータとも呼ばれます。信号の大きさがわかっているときなどに用いますが、減衰量が異なる減衰器を複数準備し、測定の度に必要なものを選択、もしくは組み合わせて使うことが多いです。

なお、減衰器はステップアッテネータやアッテネータパッドのように、減衰機能だけを持つ機器として販売されています。しかし、測定機器の中に組み込まれていることも多く、計測の補助具として扱われることも少なくありません。

増幅器の種類

増幅器には、次の種類があります。

  • 交流増幅器、直流増幅器
  • 狭帯域増幅器、広帯域増幅器
  • 電流増幅器、電圧増幅器、電力増幅器
  • 演算増幅器、光信号増幅器

何に注目して分類するかによって、増幅器の名称も変わります。例えば、周波数で分類するときは交流増幅器と直流増幅器に分けられ、交流増幅器はさらに低周波用増幅器、中間周波用増幅器、高周波用増幅器に分類できます。

また、特定の周波数の増幅に注目する場合は狭帯域増幅器と広帯域増幅器、電気に注目する場合は電流増幅器、電圧増幅器、電力増幅器などの種類に分類することが一般的です。中には信号増幅だけでなく演算機能を有する機器もあり、演算増幅器と呼んで通常の増幅器とは区別します。

その他の測定用素子の種類

減衰器や増幅器以外の測定用の素子、周辺機器などには、次のものがあります。

  • ダイヤル可変抵抗器
  • 同軸ケーブル
  • 同軸スイッチ
  • インピーダンス変換器

いずれも測定のときに単体、あるいは組み合わせて使用します。組み合わせ方については、メーカーや販売店に確認しておきましょう。

減衰器・増幅器・その他測定用素子のメリット

減衰器や増幅器、その他の測定用素子を利用することで、さまざまな測定が可能になります。以下に主なメリットを紹介します。

減衰器のメリット

減衰器のメリットとしては、次のものが挙げられます。

  • インピーダンスを変えずに信号を減衰できる
  • 周波数が異なる環境でも減衰量を一定に保てる
  • 感度の高い計測器でも大容量の信号を測定できる

信号とインピーダンスの両方が変わる多変数の状況では、計測後の数値の評価が複雑になってしまいます。しかし、減衰器はインピーダンスを変えずに信号のみを減衰するため、計測後の数値の評価や比較が容易で、より高精度の計測を実現できます。

また、周波数が異なる環境でも、既定の減衰量を維持できる点もメリットです。もちろん対応できる周波数には限界がありますが、広帯域性が保証された機器といえます。

減衰器を使うと、感度の高い計測器でも大容量の信号を測定できるようになります。通常、感度の高い計測器は大きな信号に対してすぐに飽和状態になりますが、減衰器で適度に信号を減衰しておけば測定域内に信号を収められる納められるため、高精度の計測が可能です。

増幅器のメリット

増幅器のメリットとしては、次のものが挙げられます。

  • 微小な信号を計測する
  • ノイズの影響を軽減する

増幅器を使うことで、測定不能な信号を正確に捉えられるようになります。増幅させる幅を調整すれば、幅広い周波数の信号を計測器の測定域内に収めることが可能です。

また、単純に信号を増幅されるとノイズも増幅されてしまいます。しかし、入力信号とノイズの比率、出力信号とノイズの比率を調整することで、ノイズの影響を軽減した状態での測定が可能になります。

なお、ノイズを軽減させる性能や対応域に関しては、増幅器ごとに異なるため注意が必要です。測定する環境や対象となる信号により、適切な増幅器を選ぶようにしましょう。

その他の測定用素子のメリット

その他の測定用素子を利用するメリットとしては、次のものが挙げられます。

  • 計測できる信号や物理量の幅が広がる
  • 安全性を確保した計測が可能になる

減衰器や増幅器は単体で使用することもできますが、組み合わせることや専用の接続機器などを用いることで、より幅広い場面での利用が可能になります。

また、減衰器や増幅器などはいずれも電気機器のため、計測を行うときには電源が不可欠です。特に増幅する際には電圧・電流などが一気に流れ込むこともあり、安全性の確保が求められます。

減衰器や増幅器を取り扱うメーカーなどでは、専用の電源も販売しています。出力電流を低く抑えた状態で利得を変更できる電源もあるため、計測する対象や減衰器の性能に合うものを選び、安全な計測を実現しましょう。

活用事例

分析器・検査装置への組込みにロックインアンプモジュール

微小信号測定に求められる信頼性を備えたロックインアンプ。そのコア部分をコンパクトなサイズに凝縮しました。分析機器や検査装置などの信号検出部分に組み込むことで、SN 比の大幅な改善が期待できます。PC からUSB/LAN を介して制御、表示部や操作部を排除して組込みに特化したシンプル設計です。

計測システムの信頼性・安全性を高めるアイソレーションアンプ

2チャネル/ユニットのシグナルコンディショナは多チャネル計測システムに適していて、チャネル間の加減算が行えます。直線性・周波数特性・温度/利得安定度などが優れたシグナルコンディショナは、精度の要求される計測システムに適しています。いずれも高周波ノイズ対策のために、全帯域までCMRR(同相電圧除去比)を高いレベルで確保しています。また、完全フローティングの高精度・高耐圧のシグナルコンディショナもあります。

基板設計における直流電源出力・直流信号の雑音評価に低雑音交流増幅器

低雑音増幅器を使用することで、数十VのDC信号に重畳したμVオーダーのノイズや微小AC信号を観測できます。DC-DC回路、リニア電源や電源モジュールの出力雑音評価などに活用可能です。入力に大きな電圧(エネルギー)を急に印加すると微小信号用プリアンプは故障しますが、入力保護回路を搭載しているため±40Vの信号を入力可能で、DC信号に重畳したμVオーダの微小AC信号を測定できます。

質問集

減衰器とは何ですか?

減衰器とは、測定したい電力が測定器の入力定格を超えている場合、測定器の入力定格範囲内に収めて測定するために使用するものです。アッテネータと呼ばれることが多く、ATTと表記します。

低雑音の増幅器はありますか?

世界最高レベルの低雑音性能を誇り、微小信号の高品位な増幅を実現できる増幅器があります。各種センサ、計測器や分析器などのヘッドアンプとして利用することで、高精度の信号処理を可能にします。

多チャンネルの増幅器はありますか?

アンプの入力モード・チャネル数・特性などを用途に合わせて選択可能な、小型筐体でマルチな低雑音増幅器があります。低抵抗センサ信号から高抵抗センサ信号まで、高精度な信号処理を必要とするシステムに活用できます。

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