測定環境

測定環境

測定環境とは、測定作業を実施するときの環境のことです。温度や湿度だけでなく、空気中に浮遊している塵埃など、さまざまな要素が測定結果に影響を及ぼします。正確な測定を実現するためにも、測定環境を調整することは不可欠です。

測定環境とは何か、また、どのような要素から成り立つのかについて解説します。測定環境を調整するメリットや事例、よくある質問なども紹介するので、ぜひ参考にしてください。

測定環境とは

測定環境とは、測定作業を実施するときの環境のことです。どのような測定であれ正確さが求められますが、測定環境によっては測定結果が大きく変わることもあり、測定自体が意味をなさなくなる恐れがあります。正確な測定を実現するためにも、測定環境を整えることは不可欠です。

なお、測定環境に影響を与える要素としては、次のものが挙げられます。

  • 外的要素
  • 内的要素
  • その他の要素

それぞれの要素に含まれるもの、また各要素が測定環境にどのように影響を及ぼすのか説明します。

測定環境に影響を与える外的要素

測定環境は、測定器と対象物以外によって影響を受けることがあります。これらの外的要素としては、次のものが挙げられます。

それぞれの要素が与える影響について見ていきましょう。

室温

測定を実施する場所の温度が、測定対象物や測定器自体に変化を与えることがあります。温度により熱膨張を起こす素材もあるため、室温が適切でないときは、対象物の体積や密度を正確に測定できない可能性があります。

なお、JISで定めている標準の測定環境は、試験によっても異なりますが20℃か23℃
25℃のいずれかです。精密かつ正確な測定を実施するためにも、室温は適切に保つことが求められます。

湿度

測定機器によっては、湿度の影響を受けて計測が不安定になります。たとえば、高湿度環境ではわずかな温度差でもセンサに結露が生じやすく、測定結果に影響を与えることがあります。結露した部分には塩分や塵埃などが付着しやすくなるため、計測の精度が低下したり、センサ自体の寿命が短くなったりすることも少なくありません。

なお、測定のための標準的な環境としては、JISにより湿度は50%ないしは65%と定められています。試験の目的や室温、気圧によっても適切な湿度が異なるため注意が必要です。

空気中の塵埃

空気中に塵埃(じんあい)が含まれていることがあります。塵埃は空気中を自由に浮遊し、測定機器と測定対象物の間や、測定機器内部に入り込みます。場合によっては測定結果に影響を及ぼす可能性もあるため、注意が必要です。

なお、測定環境における塵埃とは、粒子径100μm以下の固体を指すことが一般的です。肉眼でも判別可能な100μmより大きなものは、単に「ほこり」と呼ばれて区別されます。

塵埃も100μmより少し小さい程度であれば、肉眼で判別できることがあります。しかし、10μm程度になると光学顕微鏡でようやく見える程度、0.1μm程度になると電子顕微鏡で見える程度になるため、肉眼で判別して避けることはほぼ不可能です。

塵埃は1μmを境として微小なものを「浮遊塵埃」、大きなものを「沈降性塵埃」と呼び分けることがあります。浮遊塵埃にはウイルスやタバコの煙、油煙、沈降性塵埃にはカビや花粉、雲などが含まれます。いずれも粒子自体は肉眼で確認することは難しいですが、ある程度の塊となることで存在を認識することが可能です。

測定環境のなかでは、加工作業において生じる砂粒や金属粉、作業員の衣類から出た繊維や毛髪などが塵埃になる可能性があります。いずれも精密な測定を妨害することがあるため、除去することが求められます。

測定環境に影響を与える内的要素

対象物自体が、測定環境に影響を及ぼすことがあります。主な内的要素としては次のものが挙げられます。

それぞれの要素がどのように測定に影響を及ぼすか説明します。

剛性と弾性変形

剛性とは、変形に抗う力のことです。対象物に外から力が加わったときに発揮され、測定に影響を及ぼすことがあります。一方、弾性変形とは外力がなくなったときに元に戻ることです。外力と弾性変形の比をヤング率と呼び、ヤング率が低いと剛性も低くなります。

ヤング率が低い対象物を測定する場合、測定方法に注意が必要です。例えばネジなどで対象物を固定するタイプの測定機器では、変形が激しく、正確な測定ができない可能性があります。

温度

室温が20℃に保たれている環境であっても、対象物自体の温度が高すぎる・低すぎるときには正確な測定ができない可能性があります。測定を実施するときは、対象物の温度にも注意が必要です。

なお、JISでは対象物の温度も20℃にすることが定められています。室温が20℃ではない環境から、20℃に保たれた測定環境に対象物を持ち込むときは、少なくとも1時間以上は対象物を放置し、温度を馴染ませることが不可欠です。対象物の熱伝導率が低く1時間では室温に馴染まないときや、室温に馴染ませる時間を確保できないときは、誤差を加味して測定結果を補正しなくてはいけません。

対象物だけでなく、測定機器でも熱膨張は起こります。また、測定機器の熱が、測定環境や対象物に影響を与えることも想定されます。温度や熱膨張の影響を受けない測定を実施するためにも、対象物や測定機器などの測定環境に持ち込むすべてのものの温度管理が必要です。

測定環境に影響を与えるその他の要素

対象物の外的要素・内的要素以外にも、測定環境に影響を及ぼすものがあります。主なものとしては次のものが挙げられます。

それぞれの要素を説明します。

測定値の評価

測定値には誤差が含まれています。この誤差を「不確かさ」として評価することで、測定の精度を高められます。ISOなどで定められている基準に従い、不確かさを測定結果に反映しておくことが必要です。

測定機器の管理

測定機器を適切に管理しないと、機器の測定精度が下がる可能性があります。工業製品に関しては、ISO9001に基づいて管理規定を定めることが一般的です。

測定環境の種類

測定するための環境には、室温などの温度だけでなく、空気中の塵埃も適切に調整していることが求められます。塵埃を高度な基準で調整しているのが「クリーンルーム」です。クリーンルームは、対象物と吸排気システムによっていくつかの種類に分けられます。

対象物によるクリーンルームの分類

測定や製造の対象となる物質の種類により、次の2つのクリーンルームに分けられます。

それぞれの環境を説明します。

インダストリアルクリーンルーム

インダストリアルクリーンルームとは、工業製品の製造や測定に用いられる環境です。例えばシリコンウェハー(シリコンウェーハ)や半導体、液晶、精密機器を製造・測定するときは、インダストリアルクリーンルームが用いられます。インダストリアルクリーンルームでは、空気中における浮遊塵埃が適切に管理されています。

バイオロジカルクリーンルーム

バイオロジカルクリーンルームとは、バイオテクノロジーに関わる測定などに用いられる環境です。例えば医薬品や食品、宇宙産業、遺伝子研究などでは、バイオロジカルクリーンルームが用いられます。バイオロジカルクリーンルームでは、空気中における浮遊微生物が適切に管理されています。

吸排気システムによるクリーンルームの分類

クリーンルームは、吸排気システムによって次の2つのクリーンルームに分類できます。

それぞれの環境を説明します。

一方向流方式クリーンルーム

一方向流方式クリーンルームとは、天井全体と壁一面に高性能のフィルタを配置し、気流が一方向に流れる構造の環境です。塵埃は下流のフィルターから排出され、室内に滞留しにくくなっています。

非一方向流方式クリーンルーム

非一方向流方式クリーンルームとは、天井や壁の一部に高性能のフィルタを配置した環境です。正常な空気を室内に供給することで、塵埃を希釈して排出します。

測定環境のメリット

適切な測定環境を準備することには、精度の高い測定を実現するというメリットがあります。クリーンルームなどの空気中の塵埃を減らした環境や、適切な温度に管理された環境は、いずれも精度の高い測定に欠かせません。

また、精度の高い測定を実現することで、対象物をより正確に理解できるようになります。テクノロジーだけでなく化学や生物学などの基礎学問の発展にも、適切に管理された測定環境が役立っているのです。

活用事例

オープンクリーンシステムでどこでも簡単にクリーン環境を

オープンクリーンシステムなら100V電源さえあれば、室内のどこでも数分で一般環境を清浄度の高いクリーンルーム以上の環境に早変わりすることが可能です。囲いがないため作業性も損なわないほか、FFU等の重量物が天井にないため、地震にも強いのが特徴です。積木のように組合せて使うことでブース化し、空間をスーパークリーン化できる製品もあります。

ヒュームフードで研究者や実験者を有害物質から保護

実験者や研究者らを有害物質から保護する目的で使用される局所排気装置がヒュームフード(ドラフトチャンバー)です。有害物質や危険物質の封じ込め機能と排気機能を兼備する囲われた作業空間を持っています。 実験内容、使用薬品に応じて、安全のために風量、材質、形状を選定することが重要です。標準・排ガス処理装置搭載型風量可変型以外にも、形状・用途別にいろいろな製品ラインアップが存在します。

社内校正には校正室が必要

測定機器の校正を社内で行うためには、一定の温湿度条件が必要な測定室を設ける必要があります。標準器もそれぞれに適した仕様での保管が必要です。さらに機械系の校正には、ゴミの管理も必要な場合があります。また、作業者の安全衛生と作業性も考慮した環境に設計する必要もあります。

質問集

スポット的に恒温恒湿空間を作りたいのですが、何かありますか?

スポット型移動が可能な空調機は、電気工事不要で2㎥以下の空間を作れます。100V15Aコンセントに差し込むだけで、温度±1℃、湿度±3%RHの安定した空気供給ができるため、JIS計測・検査試験や安定性・長期試験に最適です。小型軽量、省スペース設計、キャスター付なので移動が簡単なため、どこでもすぐに恒温恒湿空間が作れます。

EMC試験はどのような環境が必要ですか?

外部からの電磁波の影響を受けず、外部にも電磁波を漏らさない様な金属板の部屋(シールドルーム)や、それに電磁波が内部で反射しない様に電波吸収体を張り付けた実験・試験設備(電波暗室)が必要です。シールド効果は薄れますが、テントのようなものや、小さな部品は電波暗箱という製品を採用したりします。

静電気試験はどのような測定環境が必要ですか?

まず、床の上にグランドプレーンを敷きます。その上に木製の作業台を置き、机上に絶縁シートを貼ります。間接放電試験の場合は、水平あるいは垂直結合板が必要です。詳しくはお問い合わせいただくか、静電気試験機メーカーHPなどの説明をご確認ください。

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