JMAG

JMAG

JMAGとは株式会社JSOLが1983年に開発した、電気機器の設計のためのシミュレーションツールです。モータやアクチュエータなどの電気電子部品やパワーエレクトロニクス部品の製品開発、設計支援ツールとして、40年にわたり多くの企業や大学ユーザに利用されています。

JMAGとは何か、また、どのようなシチュエーションで用いられるのかについてまとめました。JMAGを利用するメリットや活用事例、よくある質問なども紹介するので、ぜひ参考にしてください。

JMAGとは

JMAGとは1983年に株式会社JSOLにより開発された電気機器の設計・開発のためのソフトウェアです。自動車や家電製品などの身近なものから、ファクトリーオートメーションなどの産業機器に至るまで広く使用されています。

JMAGは機械内部の物理現象を正確に把握し、高速分析するシミュレーションソフトウェアです。リリースされてから40年もの長い歴史がありますが、現在でも世界中の企業や大学で活用されています。

JMAGが長期間使用されている理由としては、ユーザ目線に立ったこまめな改良が挙げられます。JSOLではユーザとの対話を通して改良を実施し、使いやすさや機能拡大を実現してきました。

また、直感的に使用できるインターフェースもJMAGの特徴です。コンピュータを使った解析の経験が少ない方でも利用できるように、操作数を減らし、簡単な手順で分析結果を取得できるように工夫しています。

JMAGの種類

JMAGには、次の5つの種類があります。

いずれも電気機器の設計・開発に使用できるソフトウェアですが、ターゲットとしているユーザや可能なことが異なります。

JMAG-Designer

JMAG-Designerは、今まで電気機器の設計や開発を行ったことがない方でも直感的に使えることを目指したソフトウェアです。また、すでに他のソフトウェアで電気機器の設計・開発をしたことがある方がスムーズに利用できるよう、使い勝手の良さを意識して開発されました。

JMAG-Designerでは、電磁界や熱、構造解析をすべて網羅し、高度な結果分析機能やモデリング機能も搭載しています。また、計算の精度と速度にこだわり、最新の計算機アーキテクチャに適合するように効率性の高いモデリング手法にも対応しました。

精度の高い解析に必要とされているのが、良質なメッシュです。JMAGではボタン1つで目的に応じたメッシュを生成することにもこだわり、形状認識技術を駆使した自動メッシュ生成を実現しています。

また、材料内部のミクロの動きを再現する材料モデリングや、複雑な現象を実機と類似したシミュレーションで実現する形状モデリング、磁界-熱連成解析や磁界-振動解析機能を実用化したマルチフィジックスなど、現在でも先端と呼ばれる技術も20世紀から搭載しています。先見性と保守性、そして飽くことのない改良がJMAG-Designerの真髄でもあるのです。

JMAG-Express

JMAG-Expressはモータ設計ツールです。電卓のように簡単に扱え、瞬時にモータ特性を割り出し、ニーズを満たす設計・仕様を割り出します。また、JMAG-Expressでは紙のノートを扱うのと同じ気軽さで、今までの設計の改良点をすべて蓄積し、見直せるので、設計ノートとして活用することも可能です。

JMAG-Expressには代表的な機器定数を計算するJMAG-Express Classicと、JMAG-DesignerにJMAG-Expressのインターフェースを搭載したJMAG-Express 21.0の2つの種類があります。

JMAG-Express Classicはシンプルな計算から機器特性を高速に推定し、JMAG-Designerにデータを送信し、トルク波形や分布量評価につなげて設計を進めていきます。一方、JMAG-Express 21.0は概念設計だけでなく基本設計に必要な項目も評価し、検討結果をJMAG-Designerに送って詳細設計へと進めることが可能です。

JMAG-Express Online

JMAG-Express Onlineは、JMAG-Expressと同様、モータ設計支援ツールです。形状プレートや材料、駆動条件などを入力すると、起動電圧定数やトルク定数、インダクタンス特性などを瞬時に計算できます。

有料ソフトウェアのJMAG-Expressとは異なり、JMAG-Express Onlineは無料で利用できるソフトウェアです。パソコンだけでなくスマートフォンやタブレットなどのモバイル端末でも利用できるため、外出先などで簡単にモータ設計を行えます。

また、JMAG-Express Onlineはインストール不要で使用することが可能です。無料アカウントを作成するだけで使用できるため、JMAG-Express導入前に使用感を試す目的で登録するのも1つの方法です。

JMAG-RT

JMAG-RTはシステムレベルのシミュレーションを実施する高速かつ高精度のプラントモデル生成システムです。システム設計からHILS(バーチャル空間を使った電子制御システムのテスト装置)による検証まで幅広く応用できます。

JMAG-RTではプラント設計と制御システムの設計を同時並行で進行できるため、システム開発速度を向上させることが可能です。また、プラント実機がないタイミングからでもシステム検証ができるため、設計ミスを極力減らし、スムーズな開発を実現します。

JMAG-RT Viewer

JMAG-RT Viewerは、JMAG-RTにより生成されたモータモデルの利用価値を向上するためのアプリケーションです。JMAG-RT Viewer上でモータモデルを制御モードに指定すると、NT特性の算出や効率マップの作成が可能になります。

実際のところ効率マップの作成は必要とされる計算が多く、データ処理作業は手間がかかり煩雑です。しかし、JMAG-RT Viewerを用いることで、Simulink上にマップを表示させなくてもRTモデルの内容が確認でき、モータ特性の確認も容易になります。

JMAGのメリット

JMAGのメリットとしては、次の4点が挙げられます。

それぞれのメリットについて説明します。

ユーザフレンドリー

JMAGは、モータ設計が初めての方でも利用できるように、直感的な操作を意識してプログラムされたソフトウェアです。また、他のソフトウェアを利用したことがある方にも使いやすいように工夫されているため、ユーザフレンドリーなソフトウェアといえます。

多様な産業で利用可能

JMAGは自動車産業や電機メーカーなど多様な産業で利用可能なソフトウェアです。幅広い業種に取り組む企業、研究機関でも導入しやすいといえます。

無料で利用できる範囲が広い

JMAGの5つのソフトウェアのうち、2つは無料で利用できます。いずれも利用範囲が広く、マルチデバイスに対応しているなど、利便性の高さも特徴です。また、有料のソフトウェアとの親和性も高く、アイデア次第で使い道が広がります。

高速処理かつ高精度解析が1つのインターフェースで実行可能

JMAGは、高速処理かつ高精度解析が1つのインターフェースで実行できます。インターフェースを連携せずに利用できることから、接続部のエラーが起こりにくいのもメリットです。

また、機械内部で発生している複雑な事象をスピーディにシミュレーションするため、システム設計の速度も格段に向上します。

活用事例

誘導加熱シミュレーション

誘導加熱による焼入れは、表面硬化の方法として優れるだけではなく、CO2排出量削減の観点からも期待される手法であり、今後更に普及が見込まれています。しかし、均一もしくは局所加熱等の加熱要求や電源の制約など、多数の条件を満たすコイル形状を探索することは簡単ではありません。加熱コイル設計の自動化が求められてきているため、JMAGの最適化機能を活用すると便利です。シミュレーションによる誘導加熱コイルの設計事例を示し、目的に応じたモデリング方法の紹介や解析事例の紹介をしたセミナーも開催されています。

JMAGオープンインタフェースプログラム

電気機器設計の高度化が近年求められています。しかし、磁気回路単体での設計には限界があり、構造・振動や制御、熱などと同時に多面的評価が必要です。一つのCAEソフトウェアだけではなく、それぞれの物理現象を得意とするソフトウェアを連携させて連成解析を行う方が効率的と言えます。JMAGでは、よりよく連携ができるようサービスを提供しています。

PWMを考慮したIPMモータの鉄損解析

IPMモータの制御にはPWM制御が広く用いられています。しかし、電流がキャリア高調波を含むことで鉄損が増加してしまいます。制御方法には様々な方式がありますが、用途や目的などに応じて変調方式が選択され、その変調方式にしたがって電流のキャリア高調波成分が変化します。鉄損の把握に関しては、選択する変調方式も念頭において高精度で評価する必要がありますが、JMAGを活用することで、効率よく磁界解析シミュレーションが行えます。

質問集

どうすれば解析効率を上げられますか?(1)

スクリプトでJMAG操作を自動化することにより、解析効率を上げられます。しかし、スクリプトを開発するには手間がかかるため、Pythonスクリプトをサードパーティ製の統合開発環境上で使用、JMAG操作することにより解析効率向上が見込めます。

どうすれば解析効率を上げられますか?(2)

JMAGでは、ユーザーにより作成された形状、あるいはもともと搭載されている形状を利用して、モータ設計が可能です。モデルの形状を準備した後は、解析条件が自動設定されるため、解析前の作業はパラメータの入力のみです。工程が簡易化され、短時間で計算が行えます。

効率よく寸法最適化を行うにはどうしたらいいですか?

JMAGはGA(遺伝的アルゴリズム:Generation Algorithm)を使用してCADパラメータの適切な範囲を検索する機能を備えていて、有効な形状を短時間で作成することが可能です。最適化の前に、この機能が有効なモデルであるか評価するツールも提供しています。

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