伝送特性測定器

伝送特性測定器

高速通信規格の普及によって高周波数帯の電波や電気信号の利用が広がっています。そこでより重要になっているのが伝送特性の正確な測定です。さまざまな測定機器を駆使することで、より通信性能の高い製品開発につながります。本ページでは伝送特性測定器とは何か、種類、メリット、活用事例、よくある質問などわかりやすくご紹介していますので製品の選定にお役立てください。

伝送特性測定器とは

まずは伝送特性測定器がどのようなものなのか解説します。

電波や電気信号の入力に対する出力の関係を測定

伝送特性とは、電波や電気信号の入力に対する出力の関係を示すものです。

伝送特性測定器は伝送特性を測定するためのもので、代表的な測定項目としては以下の4つのパラメータが存在します:

  1. 利得:入力された信号に対する出力信号の比
  2. 損失:伝送によって信号が減衰する度合い
  3. 雑音:伝送中の信号に加わるノイズ
  4. 群遅延:周波数ごとに異なる信号の伝搬時間

入力と出力がまったく同じ利得で、損失や雑音、群遅延がないのが理想的な伝送路ですが、現実的にはこれらの発生は避けられません。

伝送路をよりよいものにするにはアンテナ形状を工夫する、インピーダンスをあわせる、ノイズシールドを設けるなどの工夫が欠かせず、どの程度の改善ができたのか確認するには精度の高い伝送特性測定器が必要不可欠なのです。

高速データ通信の普及で伝送特性測定器がさらに重要に

最近は数々の高速データ通信規格が実用化されています。

たとえばNTTドコモの5G通信は受信時に最大4.2Gbps、送信時に最大480Mbpsという通信速度を実現していますし、USBの新規格であるUSB4では最大40Gbpsでの通信が可能です。

これだけの高速通信を実現するためには通信に用いる周波数を高速にする必要があり、NTTドコモの5G通信の場合は28GHz(ミリ波)、USB4の場合はGen 3で10GHzの信号を用いています。

高周波数の信号は低周波数の信号に比べて反射しやすく、ノイズが乗りやすいため伝送特性の改善がより重要であり、かつ従来よりも精度の高い伝送特性の測定が必要です。

最近はこのようなニーズに応える伝送特性測定器が発売されており、高速データ通信をおこなう機器の開発の助けになるでしょう。

伝送特性測定器の種類

伝送特性測定器にはどのようなものがあるのか解説します。

ベクトルネットワークアナライザ(VNA)

電気信号の伝送特性測定によく使われるのがベクトルネットワークアナライザです。

ネットワークアナライザ(回路網解析器)には、振れ幅情報だけ測定できるスカラネットワークアナライザと、位相情報も得られるベクトルネットワークアナライザがありますが、最近はベクトルネットワークアナライザが主流になっており、ベクトルネットワークアナライザのことを単に「ネットワークアナライザ」と呼ぶこともあります。

ベクトルネットワークアナライザは試験対象の機器に対して任意の信号を入力し、そのときの出力を測定する測定機器です。

基本的な構成要素としては以下の4つが挙げられます:

  1. 信号源:入力信号を発生させる
  2. 信号分離器:入力信号を分岐
  3. 方向性結合器:反射波と進行波のエネルギーを分離
  4. 受信部:基準信号、反射信号、出力信号を測定

受信部で測定された信号からSパラメータを算出することで、利得や損失などの特性を得られます。

信号発生器

信号発生器は、周波数や電力、変調方式などを任意に設定した電気信号を出力できる装置です。

製品開発の際、場合によっては理想的な入力信号を得るのが難しい場合があります。そのときに、校正が取れている信号発生器を利用することで、任意の入力条件での動作確認や動作解析が可能です。

信号発生器には大きく分けて2つの種類があります。1つ目はファンクションジェネレータで、これは主にデジタル信号を生成するものです。

もう1つは無線通信でよく用いられる変調波形を生成するRF信号発生器で、携帯電話やWi-Fi、Bluetooth機器の開発に応用できるでしょう。

スペクトラムアナライザ

スペクトラムアナライザは入力信号を周波数ごとに分離し、それぞれの強度を示す測定器です。

周波数ごとに分離することで、たとえばノイズ信号が持つ周波数を確認し、ノイズ源の特定に利用できます。

同じ高周波数信号を扱う測定器であることから、スペクトラムアナライザ機能付きのネットワークアナライザも販売されており、1つの測定器でより多くの解析ができるでしょう。

誘電率測定システム

高周波数帯の信号を扱う機器が増えるに従い、材料の誘電率を正確に把握する必要性が高まっています。

誘電率とは分極のしやすさを示す値で、真空の誘電率を基準にした誘電率の比を比誘電率と呼びます。

この比誘電率が高いほど電波がその材料に吸収されやすくなるため、電波の損失が多くなり、通信感度が低下するのです。

誘電率の値は温度や周波数に依存するため、使用環境を想定して測定する必要があります。このために用意されているのが誘電率測定システムです。

5G通信への需要の高まりから、40GHzクラスの誘電率測定システムも実用化されています。

電波暗箱

無線通信の伝送特性測定をおこなう場合に問題になるのが、人々が住む多くの場所で常にさまざまな電波が飛び交っているという点です。

携帯電話、Wi-Fi、Bluetoothはもちろん、あらゆる電子機器や電気機器は稼働時に電波を出します。さまざまな電波が存在するなかでの測定では、正確な伝送特性の測定はおこなえません。

また、電波の放出は法律で制限されており、測定や実験のための電波放出が違法となることもあるでしょう。

電波暗箱は外部から内部へ電波を透過させず、内部の電波を外に出さないようにするための装置です。

このなかで測定をおこなうことで外部からの影響をなくし、かつ外部に電波を放出することなく解析がおこなえます。

電波暗箱はあくまで「箱」サイズですが、より大きな電波暗室と呼ばれるものもあり、EMI試験の3m法/10m法の測定などで用いられています。

伝送特性測定器のメリット

伝送特性測定器を導入するメリットを解説します。

優れた通信性能を持つ機器を開発できる

5G通信やUSB4では高周波数帯の信号が用いられており、その伝送特性はちょっとした設計や材料で変わるデリケートなものです。

さらに6G通信では300GHzのサブテラヘルツ帯の電波が用いられるとされており、ますます対応機器の設計が難しくなるでしょう。

他社よりも優れた通信性能を持つ機器を開発するには、伝送特性を正確に把握し、適切な改善が欠かせません。その重要性は将来的により増していくことでしょう。

このため、精度や性能が高い伝送特性測定器の導入およびその使いこなしは、製品の通信性能に直結するといえます。

小型低消費電力の機器利用で解析の自由度がアップ

一昔前までは伝送線路測定器というと大型のものが当たり前でしたが、最近では小型のものが多数登場しています。

なかにはかばんに入れて持ち運べるほど小型軽量なものもあり、客先での解析や実験室と工場の行き来など、さまざまな場所で使い慣れた機器を利用可能です。

測定結果の確認もPCとThunderboltやUSBといったケーブルで接続するだけのものや、USBのバスパワーで動作するため電源接続すらいらない製品もあります。

また、目視でのグラフ確認が欠かせないスペクトラムアナライザにもディスプレイ内蔵のハンドヘルド型のものが存在しており、このような製品を採り入れることで実験室の省スペース化にも寄与しそうです。

アプリケーションごとの測定ソリューションで確実な測定が可能

一口に伝送特性測定器といっても必要な測定機器やその性能はアプリケーションごとに異なります。必要な測定器一式を揃えようとしても、必要な性能を備えた測定器を間違いなく揃えるのは至難の業といえるでしょう。

そのようなときに利用したいのが、アプリケーションごとに用意された測定ソリューションです。ノウハウに基づいた測定器および解析ソフトウェア一式が提供されるため、選定の手間を省けるのはもちろん、機器間の連携を考慮したシステムを一括導入できます。

すでに手元にある機器の活用も含め、ソリューション提供メーカーに相談することでよりよい測定環境を構築できるかもしれません。

活用事例

ハンドヘルド・アナイザを使用して屋外での作業

RF/マイクロ波 ハンドヘルド・アナライザは、高周波測定技術や半導体技術などといった全テクノロジーを詰め込んだコンパクトな機器で、高性能と拡張の点ではこれまでにない優秀さを誇ります。RFから50GHz対応まで対応し、屋外での様々な状況下における作業を考慮したデザインで、安全&安心な機器といえます。種類としては、スペクトラム・アナライザ、ネットワーク・アナライザに加えて、拡張機能を持ったコンビネーションアナライザがあります。コンビネーションアナライザは基本機能(ケーブル/アンテナ・アナライザ)にスペクトラム・アナライザ、ネットワークアナライザを合わせた機器です。

ベクトルネットワークアナライザを組み合わせて誘電率測定

5G/Local5Gシステムを支えるコネクタ・ケース・カバー・回路基板などの材料において、誘電率を知ることが重要です。材料の形態と要求性能に合わせた各種測定システム(治具等)とベクトルネットワークアナライザを組み合わせることで、最適な誘電率測定システムが構築できます。自動車業界でも車載レーダー/5Gミリ波帯実装に対して、材料の性能改善・革新要求がありますが、これらにもお応えします。

100メートル以上離れた距離での位相同期測定を実現

1ポートUSB VNAを2台同期させ直接DUTに接続し、ベクトルSパラメータ測定を100メートル以上も離れた間でも実現します。これまでベンチトップVNAと長いテストポートケーブルを組み合わせることで測定していましたが、わずらわしさが解消されます。なお、1MHz ~ 8/20/43.5 GHzの3つの周波数に対応しています。

質問集

軽量でコンパクトなVNAはありませんか?

1kgと軽量でH52xW148xD36mmとコンパクトさも併せ持つ、PC制御の1ポートベクトルネットワークアナライザが存在します。1MHz~8/20/43.5 GHzの3つのオプションから周波数レンジを選択可能です。テストポートケーブル不要で被試験デバイス(DUT)と直接接続するため、高い測定の安定性を誇り、試験構成を簡単にできます。

VNAの貸し出しサービスはありませんか?

ベクトルネットワークアナライザを購入前に検証したいという目的でしたら、Webから簡単に申し込みでき、無料でデモ機を貸し出しするサービスがあります。機器設定や測定方法が不慣れでも充実のサポート体制で安心して活用できます。

誘電率測定の相談をしたい

VNAを提供している測定器メーカー、治具を提供しているメーカーでは誘電率測定システムに関して、相談に対応したり、提案を行っていたりしており、Webから簡単に申し込めるようになっています。また、受託測定サービスもあり、専門の技術者によるコンサルティングも行っています。

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