電圧・電流・抵抗、電力測定器

電圧・電流・抵抗、電力測定器

電気回路の基礎をなす電圧、電流、抵抗値、そして電圧と電流から導き出される電力を測定するための機器が電圧・電流・抵抗、電力測定器です。電気機器の黎明期から存在する歴史ある測定器ですが、その必要性はますます増しており、これからの省エネ時代にも欠かすことができない存在であり続けるでしょう。本ページでは電圧・電流・抵抗、電力測定器とは何か、種類、メリット、活用事例、よくある質問などわかりやすくご紹介しています。製品の選定にお役立てください。

電圧・電流・抵抗、電力測定器とは

まずは電圧測定器、電流測定器、抵抗測定器、電力測定器とはどのようなものなのかについて解説します。

電圧測定器とは

電圧測定器は電圧計とも呼ばれ、その名の通り電気回路の電圧を測定するためのものです。電圧を測定したい箇所に対して並列に電圧測定器を接続して使用します。

一口に電圧測定器といっても理科の実験で使用する直流電流用の電圧計、家庭のコンセントに供給されているような交流電流用の電圧計、さらに両方が計測できる電圧計も存在。

また、交流電流用のなかでも低周波用から高周波用までさまざまな電圧計があります。

電圧を計測することで電流も算出できるため、電圧測定器は電気回路にとって最も基本的な計測器の1つといえるでしょう。

電流測定器とは

電流測定器は電流計とも呼ばれ、電気回路に流れる電流を測定するためのものです。電圧測定器とは異なり、電気回路に対して直列に電流測定器を接続して使用します。

こちらも直流用や交流用、低周波数用や高周波数用が存在。用途に応じて使い分けられています。

抵抗測定器とは

抵抗測定器はも抵抗計とも呼ばれ、電気回路の抵抗の値を測定するためのものです。

電圧計と電流計の両方が内蔵されており、電圧と電流の値からオームの法則を利用して抵抗の値を算出します。

用途としては絶縁抵抗の測定のほか、溶接のつき具合によって抵抗が変わることを利用し、溶接の品質確認に使われることもあるなど、さまざまな応用が可能です。

電力測定器とは

電力計は、消費した電気量を測定するためのものです。最も身近なものとしては、電気料金を算出するための電気メーターが挙げられます。

最近はSDGsなどの流れもあり、省エネ機器開発のために電力測定器がより広く用いられる傾向にあります。一方で、スイッチング速度が速いパワー半導体の登場により、電力測定器で測定が求められる対象も高度なものになっており、これからも進化を続けていくことでしょう。

電圧・電流・抵抗、電力測定器の種類

電圧測定器、電流測定器、抵抗測定器、電力測定器のそれぞれについて、どのような種類があるのか解説します。

電圧測定器

まずは電気回路測定器の基本ともいえる、電圧測定器についてです。

直流電圧計

理科の実験で用いられることから、多くの方になじみがあるのが直流電圧計です。

アナログの針式のものは一般的に可動コイル型と呼ばれる方式を採用しています。永久磁石とコイルが配置されており、電流を流すとコイルに磁界が発生し針を動かす力が生まれることで電圧の値を測定するという仕組みです。

交流電圧計

交流の場合、電圧が時間とともに変化することから直流電圧計と同じようには測定できません。また、家庭用の電気ですら1秒間に50回/60回の変化をすることから、電圧の値をリアルタイムに表示しても人の目は追いつけないでしょう。

そこで、アナログの針式のものの場合は交流電流を直流電流に変換してから測定をおこないます。表示される値は通常、実効値です。

静電電圧計

静電電圧は、2つの帯電電極板の間に採用する静電力を利用した電圧計です。

磁力ではなく電圧で作動するため消費電力が少なく、高電圧かつ定電流の回路に向いています。

また、交流にも利用可能です。

熱電形電圧計

熱電形電圧計は熱電対を使って測定する電圧計です。熱電対につけた熱線に電流を流し、その温度上昇によって電圧を測定します。

高周波の交流にも利用可能であり、低電圧であっても利用可能な点が特徴です。

電子電圧計

電子電圧計は電子回路を使って測定をおこなう電圧計です。もともとは真空管が使われ、現在では半導体が使われています。

針を使った電圧計の場合、針を動かすための電流が必要であり、内部抵抗を大きくするのが難しいのが問題です。これに対し、電子電圧計は電子回路を利用するため、非常に高い入力抵抗を実現できます。

また、微少な電圧も測定可能であることから、零位検出器として利用可能です。

デジタル電圧計

最近はアナログ式の針表示ではなく、デジタル方式で電圧を測定する電圧測定器が普及しています。

基本的な仕組みは入力電圧に対して基準電圧を比較し、その大小によって電圧を測定するというものです。逐次比較型のものや並列比較型のもの、積分型A/D変換器を使用したものがあります。

測定された電圧の値はデジタル信号として表示部に送られ、LEDや液晶画面によってその値を表示。細かい値まで読み取りやすいのが特徴です。

また、一般的なデジタル電圧計の場合、この比較部に入力できる電圧幅が限られているため、前段に入力電圧を調整する入力変換部があります。ここで比較部に入力可能なレベルに変換し、後から調整した分を補正することで正しい電圧の値を表示可能です。

デジタル方式の利点は、

  • 電圧の値がそのまま表示されるため、針のように人によって測定した値が異なるということがない
  • デジタルデータなので、演算やグラフ表示など、後処理がしやすい

といったものがあります。

一方で、針に比べて電圧の変化の傾向を目視するのが難しいのは欠点です。

電流測定器

電流測定器の種類は電圧計とほぼ同じであり、一般的なものは可動コイル型を採用し、直流や交流、熱電形電流計などが存在します。

抵抗測定器

抵抗測定器には2端子法と4端子法と呼ばれる方式が存在します。

2端子法

2端子法はその名の通り、2つの端子を電気回路に接続して測定する方式の抵抗測定器です。

2つの端子を接続すればよいので簡単に測定できるのがメリットですが、内部の電圧計と電流計が同じ回路内に存在するため、測定対象とリード線の接触抵抗やリード線の配線抵抗を一緒に測定してしまい、測定誤差が生まれてしまいます。

ただ、測定対象の抵抗が十分大きい場合はこれらの抵抗は無視できるため、十分な精度が得られるでしょう。

4端子法

4端子法の場合、電圧計と電流計が内部で独立しており、電圧計側に電流をほとんど流さない構成にすることが可能です。

このため、測定のための電流がすべて測定対象に流れ、測定対象の抵抗が小さくても精度のよい測定ができます。

一方、4つの端子を対象に接続する必要があり、準備が煩雑なのが欠点です。

電力測定器

電気代の計算でなじみのある電力測定器ですが、実はさまざまな種類が存在します。

機械式電力量計

昔はどこの家庭にもあった旧式の電気メーターに使われているもので、電力の積算量を計算できます。

原理としては「アラゴの円盤」の回転を利用しており、電気の流れによって回転する円盤の回転数によって電力の積算値を表示するものです。

ただ、最近は家庭用も含め電子式へと移行が進んでおり、限られた用途でしか使われていません。

パワーアナライザ

パワーアナライザは電力計の機能をベースに、高周波解析機能などを備えた電力測定器です。

デジタルオシロスコープの技術を応用したデジタルサンプリングにより電力効率の時間変化を視覚化するなど、単なる電力測定器にとどまらない機能を有しています。

これからの省エネ機器の開発に欠かせない測定機器といえるでしょう。

電圧・電流・抵抗、電力測定器のメリット

電圧測定器、電流測定器、抵抗測定器、電力測定器を導入することで得られるメリットを解説します。

電気回路の学習用

これらの測定器を利用することで、目には見えない電気を定量化して表示できます。これにより電気回路の動作をより具体的に把握でき、学習が進むでしょう。

実際、学校教材用のテスターが販売されており、実際に使ったことがある方も多いかもしれません。

故障箇所の特定

家電や電気機器の故障箇所を特定するのにもこれらの測定器は使われます。

目には見えない断線や接触不良、はんだ不良も、電圧を測定することで一目瞭然です。

技術が進んだ今でも、エンジニアはこれらを使って故障箇所の特定をおこなっています。

太陽電池などの定期的な点検に

絶縁測定器は、太陽電池などの定期的な点検に使われます。

太陽電池には高い電圧が発生するため、しっかりとした絶縁処理が必要です。しかしながら、動物がケーブルをかんだり、塩害によって腐食したりして、絶縁性が低下することがあります。

絶縁の劣化が進行すると回路がショートし火災につながるかもしれません。

このため、住宅用も含め太陽電池に対して絶縁測定を含めた定期的な保守点検が義務づけられています。

太陽電池が普及するなか、抵抗測定器の需要はこれからも高まりそうです。

省エネ機器開発

パワーエレクトロニクスの分野ではパワー半導体がよく使われるようになっています。コンセントやバッテリーなどから供給される電気はそのままでは使えないため、変換する必要がありますが、それを担うのがパワー半導体です。

パワー半導体には一方向にだけ電流を流す整流、電気信号を大きくする増幅、電気を流したり止めたりするスイッチングの機能があります。

より効率よく電気の変換をおこなうため最近のパワー半導体はスイッチング速度が高速になっており、より高周波数に対応した電力測定が必要です。

一方で、太陽電池などは直流の電気を発生させるため、直流を測定する機能も大事。より省エネ性能を高めるには測定精度も重要といえるでしょう。

これらを満たすために開発されているのが電力測定器の1つであるパワーアナライザであり、これからますますその必要性が上がると考えられます。

活用事例

DMMを活用したデータ収集システム

高性能のベンチトップDMMに使用されている測定エンジンを、メインフレーム内部に組み込んだデータ収録システムは、高速で大容量のデータを精度よく収集できます。入力信号も、DC/AC電圧、2線式/4線式抵抗、DC/AC電流の他、熱電対/RTD/サーミスターによる温度、周波数と周期、ダイオードとキャパシタンス、歪み(直接およびブリッジ)に対応しています。

GaN/SiCを用いたインバーター, モーターの電力変換効率を正確に評価

GaNやSiCを用いた電力変換器の評価では、高速スイッチングによる電力変動を正確に把握するためにノイズ耐性・サンプリング性能が重要で、それらはパワーアナライザで評価可能です。
また、エネルギーを有効活用するためにデュアルインバーター方式によるEV駆動システムやスマートハウスの電力融通システムなど多系統化が進んでいますが、複数chの電力を1台で測定し多系統化する機器を一括評価できるようにもなっています。

待機電力測定に高品質パワーアナライザ

不安定な電力測定を行う場合、IECでは長い時間の測定を許可しているため安定した測定結果を得られます。しかし、 汎用パワーアナライザでは被測定物の不安定性な要因を想定していません。そこで 高性能のパワーアナライザであれば、短期間の測定時間で測定安定性を得る事ができるため、これまでより短い工数でデータを得ることができます。
また、1mA以下の電流を計測する場合、外部シャント抵抗により測定しますが、 シャント抵抗と装置の測定誤差が加わり、システムエラーをより複雑化する可能性を秘めています。 高品質パワーアナライザを内蔵したシャント抵抗で測れば、ダイレクト入力により測定物の測定が可能です。

質問集

抵抗測定における、2端子法と4端子法の違いとは?

抵抗測定を行う際、2端子法で測定することが一般的です。しかし2端子法では、測定リードの抵抗や接触抵抗の影響を受けてしまいます。測定対象の抵抗が大きい場合は誤差が問題になりませんが、抵抗が微少な場合は問題が生じます。そこで採用するのが、測定対象の抵抗のみ測定できる4端子法です。

カレントセンサの選び方

被覆のある導線に流れる電流を測定する場合、クランプ型センサを使用します。電流値や測定確度、交流の場合は周波数特性に応じて選定しますが、高確度で測定したい場合は、貫通型を使用すると良いでしょう。ただ、配線前に測定対象に事前に設置しておく必要があります。

校正用として使用可能なDMMはありますか?

0.01ppmの高分解能を持つDMM(デジタル・マルチメータ)は、電子部品・半導体検査システムの校正用の他、研究開発、校正機関などで使用されています。高分解能(直流電圧測定:10nV、直流電流測定:100fA、抵抗測定:1μΩ)で測定可能。5ppm/1年間(電圧測定相対確度)の高精度での測定を保証します。また、内蔵している自己校正機能により、いつでも高確度測定できるだけでなく外部からでも少ない標準器で校正可能です。

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