パワーエレクトロニクス

パワーエレクトロニクス

パワーエレクトロニクスとは、電力を変換する技術のことを指します。最近は電力を変換する際の効率が飛躍的に向上し、そのために必要な回路が小型化するなど、省エネ性能とコストの両面で製品開発に寄与可能です。また、電力測定のための機器やシミュレータも充実してきました。本ページではパワーエレクトロニクスとは何か、種類、メリット、活用事例、よくある質問などわかりやすくご紹介していますので製品の選定にお役立てください。

パワーエレクトロニクスとは

まずはパワーエレクトロニクスがどのようなものなのか解説します。

電力を変換するための技術

パワーエレクトロニクスを一言で説明するなら、電力を変換するための技術であるといえます。

電力と一口にいっても電圧、電流、直流/交流などによりさまざまな違いがあります。たとえば日本の家庭で一般的にコンセントから供給されているのは100Vの交流です。

しかしながら、すべての電化製品が電圧100V、50Hz/60Hzの交流で動作する部品だけで構成されているわけではありません。特定の電圧でしか動作しないものや直流でしか動かないもの、異なる周波数の交流を必要とするものもあるでしょう。

そこで、供給された電力を各部品が必要とする仕様の電力に変換する必要があり、その際にパワーエレクトロニクスの技術が求められます。

パワーエレクトロニクスで必要とされる機能は、大きく以下の4つに分類できます:

  1. DC-AC変換:直流を交流に変換
  2. AC-DC変換:交流を直流に変換
  3. DC-DC変換:直流の電圧を変換
  4. AC-AC変換:交流の電圧/周波数を変換

身近なところで使われるパワーエレクトロニクス

パワーエレクトロニクスは人々の身近なところで使われています。

日常的に使われるものとしてはスマートフォンやノートパソコンのバッテリーの充電に用いられるACアダプタがあります。コンセントから供給されるのは100Vで50Hz/60Hzの交流ですが、これをバッテリーが必要とする直流に変換するのがACアダプタの役割です。

また、ハイブリッドカーや電気自動車は車に搭載したバッテリーで動作しますが、バッテリーが供給する電力が直流なのに対し、モータのなかには交流で動作するものがあります。この場合、パワーエレクトロニクスを用いてバッテリーの供給電力を交流に変換しなくてはなりません。

各家庭の屋根の上などに取り付けられる太陽電池は直流の電気を作りますが、それをコンセントから利用するには100Vで50Hz/60Hzの交流に変換しなくてはなりません。ここでもパワーエレクトロニクスを用いた変換がおこなわれています。

このほかにもエアコン、炊飯器、電車、エレベータなどあらゆる場所にパワーエレクトロニクスが使われているといっても過言ではないでしょう。

注目のパワー半導体

パワーエレクトロニクスの分野で特に注目を集めているのがパワー半導体です。

パワーエレクトロニクスを用いて電力を変換する際、エネルギーを100%の効率で変換するのは難しく、損失が発生します。この損失は何の役にも立たず、ただエネルギーを無駄に消費しているだけの存在です。

最近のパワー半導体は一般的な半導体に用いられるシリコンではなく、SiC(シリコンカーバイド)やGaN(窒化ガリウム)を使い、従来よりも高効率での電力変換を実現しています。

SiCは特に高電圧を必要とする分野に強く、発電システムで用いられるパワーコンディショナや電気自動車で用いられます。

GaNは高周波数でのスイッチングに強く、ACアダプタなどの場合、高周波数化によってインダクタなどの周辺部品を小型化可能です。

今後も脱炭素社会に向けてパワー半導体の進化が求められていくでしょう。

パワーエレクトロニクスの種類

パワーエレクトロニクスに関連する製品について解説します。

パワーアナライザ、パワーメータ

パワーアナライザはデジタルオシロスコープを発展させたもので、位相角、力率、電力積算値、電流積算値、周波数といった電力の分野で必要とされるパラメータを測定できるようにしたものです。

パワーアナライザ以外にパワーメータと呼ばれることもあります。

たとえば入力電力と出力電力を測定し比較することで、そのパワーエレクトロニクスの変換効率を求めることが可能です。また、電圧低下やサージといった異常を検出することもでき、製品開発に役立つでしょう。

最近では先述のSiCやGaNといったパワー半導体に対応するために、より精度が高く高速スイッチングに対応したパワーアナライザが登場しています。

パワーエレクトロニクスシミュレータ

性能の高いパワーエレクトロニクスを作るには時間がかかります。このためにパワーエレクトロニクスによって駆動されるモータなどの試験が遅れ、製品全体の進捗が遅れることもあるでしょう。

そこで利用されるのが、パワーエレクトロニクスが供給する電力を再現するシミュレータです。MATLAB/Simulinkなどで作成したモデルをリアルタイムに実行し、設計中のパワーエレクトロニクスを模した精度の高い試験が可能になります。

また、電圧降下やパルスノイズといった異常を再現することもでき、それらが発生した際に接続されたモータなどに致命的な問題が起きないか実験することも可能です。

パワーエレクトロニクス対応回路シミュレータ

パワーエレクトロニクスの回路は実験後に実物を作って試験する必要がありますが、実物を作るには時間と費用がかかります。パワーエレクトロニクス対応の回路シミュレータを用いることで実物を作らずともさまざまな試験ができ、実物を作る際の品質を向上させられます。

パワーエレクトロニクスだけでなくモータなどを組み合わせたシミュレーションをおこなうことも可能なため、製品全体の工数削減に寄与できるでしょう。

モータ信号発生器

モータ信号発生器は、電力入力に対するモータの応答を再現するためのシミュレータです。

既存のパワーエレクトロニクスに新しく設計するモータを接続する際、モータ完成前に試験をおこなえます。

シミュレータ上で多くの問題が発見できればモータの試作回数を減らし、工数と費用を削減できるでしょう。

パワーエレクトロニクスのメリット

パワーエレクトロニクス関連製品を導入するメリットを解説します。

省エネ製品を開発できる

二酸化炭素排出量の規制やエネルギー価格の上昇により、電気を使う製品には低消費電力であることが強く求められます。そこで重要になるのがパワーエレクトロニクスです。

たとえば電圧を降下させる場合、従来は抵抗を入れて調節していました。この場合抵抗で消費される電力は熱として捨てられ、降下させる電圧が大きいほど無駄に電気を消費することになります。

これに対し、パワーエレクトロニクスでは回路を高速にスイッチングすることで電圧を降下させます。抵抗と異なり回路がオフになっている際の消費電力は非常に低いです。この方式は交流から直流への変換にも利用でき、電力変換の高効率化につながっています。

電力変換効率は年々上がっており、より新しい材料や方式のパワーエレクトロニクスを採り入れることで、製品をより省エネ仕様にできるでしょう。

DCモータなどの高効率機器が使えるようになる

扇風機やエアコンに用いられるモータは、従来は交流で動作するACモータが主流でした。これはコンセントから供給される電力が交流であるためです。

効率の面でいうと直流で動作するDCモータが有利であるものの、先述の通り交流から直流に変換する際の損失が大きく、かつそのための回路が大きいことが問題でした。

最近のパワーエレクトロニクス技術の発展により、直流への変換効率が上がり、回路も小さくなったことから、扇風機などでもDCモータが利用されるようになっています。

また、日本は東と西で交流の周波数が異なっており、昔は引っ越しの際に家電一式の買い換えが必要でしたが、最近はパワーエレクトロニクス技術により50Hz/60Hz両対応の製品が当たり前です。

活用事例

パワーアナライザとHILSの連携でモータドライブシステムを

パワーアナライザーとMATLAB対応リアルタイムシュミレータとを連携させて、モータ制御システム開発を効率化しませんか。応用例として、MATLAB 制御モデルによる実モータドライブ、アルゴリズム検証や、最大効率制御に必要な位相テーブルの自動生成、モータ制御パラメータの自動適合などが可能です。モーターの測定 / 試験に使う様々な機器のレンタルも行えるため、ご相談ください。

GaN/SiCを用いたインバーター、モーターの電力変換効率を正確に評価

世界最高クラスの測定確度を備えたパワーアナライザで、GaN/SiCを用いたインバーター、モーターの電力変換効率が正確に評価可能です。また高速スイッチングによる電力変動も正確に捕捉します。エネルギー有効活用のための多系統化(スマートハウスの電力融通システム、デュアルインバーター方式によるEV 駆動システムなど)が進行していますが、1台で多CHの電力を測定可能なため一括で評価を行えます。

パワーデバイスの熱特性を素早く正確に試験/測定/評価

熱電対もサーモグラフィーも使用しない、JEDEC規格に準拠した過渡熱測定装置を活用することにより、ICパッケージからパワーデバイスやLED、システムなどまで様々な用途で熱特性を効率よく測定可能です。この装置では、実装状態での放熱経路の様子(熱抵抗と熱容量の内訳)が得られます。伝導のみならず、対流、輻射の効果も評価できるほか、Si系のデバイス以外にもSiC、 GaN などのワイドバンドギャップ半導体にも対応しています。また、デスクトップ温調器と組み合わせて、熱抵抗値を高精度に測定可能です。

質問集

パワー半導体の評価を委託したい

お客様の開発設計を促進するために、MOSFET、IGBT、ダイオードの各種パワーデバイス(Si, SiC, GaN, Ga2O3(酸化ガリウム))及びパワーモジュールの静特性やスイッチング特性などの、様々な評価サービスを提供するシステムがあります。スイッチング特性評価、静特性評価、信頼性試験、ノイズ試験などに対応しています。

電源回路の小型、高効率化したい

電源関連回路の開発・設計・試作・量産サポート、教育用教材等、お客様の様々なニーズにお応えする会社があります。最新アナログ制御ICによる設計、アナログ回路のDSP,PLD,MPU他によるデジタル制御による設計、スイッチング・トランス設計などの特長を保有していて、バッテリ充放電、車載対応電源、医療器用電源、SiCドライバ、大学他研究機関向け実験教材などの実績があります。

パワーエレクトロニクスを基礎から教えて欲しい

パワーエレクトロニクス分野で、電源の開発設計とパワーデバイスに長年従事してる技術者による基礎講座があります。パワーデバイスの基礎講座では、パワーデバイスの基本機能と動作原理と、選定するうえで理解しておかなければならないデータシートの内容と主要特性項目の意味をわかりやすく解説します。インバータの基礎講座では、座学以外にも実験回路と計測器とを使い動作確認実験をすることで、インバータの動作原理はもちろん回路構成も習得可能です。

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