1Dシミュレ-ションでお客様の脱炭素、CO2削減を支援(エムオーテックアイデアズ / MO Tech Ideas Inc. 土居 格様インタビュー)

掲載日:2023.4.10

2015年に地球温暖化対策の国際的な枠組みである「パリ協定」が採択されたのを契機に、企業による温暖化ガス排出削減の動きが加速しています。このような中、本日は当社と協業させていただいているエムオーテックアイデアズ / MO Tech Ideas Inc.の土居 格(どい いたる)様に「工場における脱炭素」をテーマにお話しを伺います。

M&Oコンサルティングの土居 格(どい いたる)様

土居様の経歴についてお聞かせください。

2009年、大学修士課程を卒業後、新卒でパナソニックに入社、カメラの設計、開発に3年携わりました。2012年、ソニーに転籍。ソニーにおいてもカメラの設計、開発に携わりました。
その後、ソニーの中で、コンピュータを使用して性能予測をするシミュレーション、CAEと呼ばれる分野の仕事に携わりました。

※CAE Computer Aided Engineeringの略、コンピュータ上でシミュレーション、解析を行うこと。

2020年1月、ソニーを退職。
2020年2月にM&Oコンサルティング(現在のエムオーテックアイデアズ / MO Tech Ideas Inc.)を立ち上げ事業をスタートしました。
現在は、主にメカ系のシミュレーションの受託開発、コンサルティングをしております。

 

そもそも土居様が理工系を目指されたきっかけは何だったのでしょうか?

小さい頃からモノ作りが大好きで、エンピツよりも半田ごてを握るほうが早かったぐらいです。(笑)電子工作をしたり、物を作ったり、庭を掘ったり、木を切ったり、穴をあけたり。。。そういうことが大好きでした。

 

M&Oコンサルティングという社名の由来は?

現実世界をバーチャル世界で数式で表現することを「Modeling」といいます。
そして、「Modeling」はソニー時代から得意だったとこともあり、「M」をいただきました。

次に「O」ですが、
「Modeling」により何ができるか?
例えば実物で発生した不具合を、「Modeling」で計算し、不具合を再現する。
私が使用している1Dシミュレーションという手法は非常に早く計算可能なので少しづつ条件を変え、様々なパターンで何百回と計算を繰り返し最適解を探す。
つまり「Modeling」を使って「最適解」を探していくということで「Optimisation」から「O」をいただきました。

 

主なお客様は?

主なお客様は、物を作っている、もしくは設計・開発をしている企業様です。電気メーカ、自動車メーカ等の生産部門や研究開発、設計部門がお客様の中心となります。
企業規模的には、1名の企業様から大きいところでは東証プライムに上場している企業様まで様々な企業様の課題解決のお手伝いをさせていただいています。

 

コンサルティングの具体例を教えてください。

コンサルティングの対象物としては、「動きのあるもの」が中心となります。
モータやエンジン、身近なところでは、ホチキスのように人が使用する文房具等も対象となります。

コンサルティングの具体例

こうした対象物を、どう設計したら性能向上できるか、静音化できるか、効率的に設計できるか等、様々なお客様の課題を伺い、1Dシミュレーションにより課題解決を支援しています。

 

「動きのあるもの」というのがポイントなのですね?

そうです。「動き物」はどんどん減ってきていますが、工場で物を作る以上、何かしら動くわけです。例えばスマートホンのように完成した製品自体に可動部がほぼない製品でも、工場での部品組み付け工程では必ず「動き」が伴います。こうした工程において、どのようにしたら、もっと早く組み立てることができるのか等、多くの課題があります。

 

インタビューテーマでもある「脱炭素」が求められている背景について教えてください。

人手不足、人件費の上昇、手作業による品質のバラつき等を背景に昨今、生産現場の自動化が加速しています。

ロボットが作業者をサポートする、もしくはロボットが作業者に取って代わる、ということが進んでいます。

それらロボットを動かすためには電力を使います。

製品を製造するのに、どのくらいの電力を使うか、電力を使うということは、すなわちCO2を排出するということですから、脱炭素を目指すお客様にとって、電力削減ニーズは非常に高いわけです。

もともと人がやっていた作業をロボットに置き換え、そのあと、どうやってロボットの消費電力を削減し、CO2排出量を削減するか?ということに多くのお客様は注力されています。
特に自動車製造のように大きな物を取り扱う工場では、多くのCO2が排出されますから。

 

1Dシミュレーションとは、どういう概念なのでしょうか?

物を作るときには、数多、色々な計算が伴います。
この車を走らせて大丈夫か?試作品を作成しても大丈夫か?というのを事前に計算をします。
例えばエンジンであれば、このエンジンで試作しても十分な加速性能が得られるか?
そういう計算をする時の手段の1つが1Dシミュレーションです。

1つわかりやすい例を示します。

1Dシミュレーションの概念

これは、あるドラマの人間関係相関図ですが、ここには色々な登場人物がいて、それぞれが色々な関係性をもっています。

その時に、AさんとBさんは相棒関係だとか、全ての登場人物の関係性を、もし全て文章で書かれると、非常に理解し難いですよね。

しかし、このように紙の上に登場人物の顔と名前があって、AさんとBさんは相棒同士で、BさんとCさんは敵対関係で、とか図で示されていればパッと見てわかりますし、間違いにも気づきやすくなります。

さらに、ここに登場人物が1人増えたとして、既存の人との関係性についても表現しやすいでしょう。

こうしたことが物理の世界でもあります。

エンジンからでてきたトルクをトランスミッションで受けて、トルクを変換してタイヤに伝えるとか。

エンジン、トランスミッション、タイヤの相互関係

こうしたことを数式で書いても、もちろん良いのですが、こういう二次元の画面の中にエンジン、トランスミッション、タイヤ等の要素を並べていくのが1Dシミュレーションの考え方です。

さきほどご紹介したドラマの人間関係相関図は、正に1Dシミュレーションの考え方であり、俳優さん達は関係性に基づいてドラマを体現していくわけです。

自動車においては、エンジン、トランスミッション、タイヤ等の各要素を1Dシミュレーション上でつないでいく、そうすると裏で計算がなされ、実際の製品になった時に、エンジンとトランスミッションとタイヤ等の各要素が、どのような関係をもって動くのか、そういうイメージです。

これらの要素を全部、手計算しても良いですし、電卓で計算しても良いのですが、それぞれ物理の数式がありますので、それをつないであげる、新しいモータが出てきたときには、新しい数式にしなければなりませんが、それぞれをつないであげる。
そしてタイヤと地面もつないであげる。スリップするのか、スリップしないのか等々。

 

1Dシミュレーションよりも3Dシミュレーションのほうが高度なことができそうなイメージがありますが、1Dシミュレーションのメリットは何でしょう?

3Dシミュレーションのほうが直感的です。
例えば3Dの中に部品が置いてある、こことここは回転します、こことここはぶつかります、ということを構築しやすいというメリットがあります。

1Dシミュレーションのイメージ

一方、1Dでは、1次元に全ての要素を置いていくので構築はたいへんです。
しかし構築後の計算が非常に速いのが特徴です。

1Dも3Dもそれぞれ住み分けだと考えています。それぞれ得意、不得意があります。
1Dで解ける課題については1Dで解いたほうが早いですし、構築も慣れると1Dの早い。

 

1Dシミュレーションという手段を使って改善していくということですが、どのような効果を期待できますか?

1Dは計算が速いので、3Dと比較して1/10くらいで結果が得られる場合もあります。
例えば最適解を得るために何百ものパターンで計算をまわすケースでは、短時間で結果が得られることが、如実に効いてきて、3Dだと何十時間もかかるのが、1Dだと1時間程度で完了する場合もあります。

 

計算速度が速く何百回も回せるということは、それだけ多くのパターンを試せるということですか?

そのとおりです。
色々な条件を試すことができますから最適解を導きやすいということです。
もしくは同じ計算回数でも、より早く解にたどり着くということもあります。

 

こうした取り組みにより、CO2削減、カーボンニュートラルにつながっていく?

そうですね。工場の中で行っているロボットやAGV等、色々な動きを1Dシミュレーションの中で試し、どういう動き方が最適なのか、いくつか候補を出して、実際に現場で試してもらいます。
実際に、今まで工場で動かしている動かし方に対して、1Dシミュレーションで最適解を見つけると、10~20%のCO2削減ができたという事例はあります。

小さい部品を動かすよりも、大きい部品を動かすほうがCO2排出量が多いので、自動車のような大きな部品になってきますと、同じ10%でもCO2の削減トン数で考えると非常に効果は大きくなります。

 

CO2削減テーマからは外れますが、「音や振動の軽減」についても対応可能とのことですが、具体的に教えてください。

例えば、ノック式ボールペンでもペン先を出すときにカチッと音がしますが、その音を小さくするには、どのようなバネが最適か、ということを1Dでシミュレーションします。強いバネにしたら良いか、弱いバネにしたら良いか等々。
ペン先の出し入れを確実に制御しつつ、音も小さくする、という相反する要素の最適解を探していきます。

 

1Dシミュレーションという手法でお客様の課題解決にあたる土居様のパートナーである穂高電子には、どのような強味があるとお考えでしょうか?

主に3点あると考えております。

まず1点目は、 長年の顧客構築に基づく営業力です。そして2点目は、 幅広い取引先を背景としたソリューション提案力です。そして3点目は、 納期管理、物流調整など豊富な経験に基づくプロジェクト管理能力です。

 

最後になりますが、脱炭素、カーボンニュートラル等で課題を抱えているお客様に一言をお願いします。

世界的には、欧米のメーカはじめ、東南アジアの会社においても脱炭素の取り組みが加速しています。
日本においても、大手メーカを中心に脱炭素への取り組みの重要性がさらに高まっています。こうした中、日本の中小企業の皆様も脱炭素への取り組みが喫緊の課題になっているのではないでしょうか。

私たちは、そうした中小企業の皆様のパートナーとしてCO2削減、脱炭素の取り組みを強力に支援してまいります。ぜひ一度ご相談いただければと思います。

M&Oコンサルティングの土居 格(どい いたる)様

本日は、ありがとうございました。

今回、ご紹介した1Dシミュレーションは様々な可能性を秘めています。ご興味を持たれたお客様におかれましては、どうぞお気軽にご相談ください。

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