顕微鏡

光学顕微鏡、電子顕微鏡、拡大鏡、デジタルマイクロスコープ

理科の実験で誰もがなじみがある顕微鏡。実は顕微鏡の世界は奥深く、さまざまな種類のものが存在しています。製造の現場でも、人間の目では見えないレベルの解析に活躍中です。
本ページでは顕微鏡とは何か、種類、メリット、活用事例、よくある質問などわかりやすくご紹介していますので製品の選定にお役立てください。

顕微鏡とは?

まずは顕微鏡とはどのようなものなのかについて解説します。

肉眼では見えない小さいものを見るための道具

顕微鏡とは、人間の肉眼では見えない小さいものを見るための道具です。

その始まりは16世紀後半で、オランダのメガネ職人だったヤンセン親子が2枚のレンズを組み合わせることで、ものが大きく見えるようになることを発見したといわれています。

この光学式の複式顕微鏡といわれる顕微鏡は発展を続け、位相差顕微鏡や共焦点レーザー顕微鏡へと発展しました。

一方、光学式の顕微鏡には見られる物体の小ささに限界があることがわかり、電子顕微鏡や走査型プローブ顕微鏡が発明され、今は原子レベルの凹凸が観察可能になっています。

製造の現場でも使われる顕微鏡

一般に顕微鏡というと生物や細菌、医療といった分野での使用が思い浮かびますが、製造の現場でも顕微鏡は活躍しています。

これは工業用顕微鏡あるいは産業用顕微鏡と呼ばれ、金属の破面観察、表面の付着物やコンタミの調査、部品の精細な寸法計測などに使われているのです。

製造の現場では光学式顕微鏡はもちろん、走査型プローブ顕微鏡なども使われており、用途に合わせ多種多様な顕微鏡が販売されています。

不透明なものを観察する金属顕微鏡が使われる

顕微鏡というと、理科の実験でプレパラートを使って下から光を当て、対象物を観察したことがある方もいるでしょうが、製造の現場で主に観察するのは金属や半導体など不透明な物体です。

このため、対物レンズと同じ側に照明があり上から照明を当てる、金属顕微鏡と呼ばれる方式が光学式顕微鏡ではよく使われます。

倒立顕微鏡が使われる

また、理科の実験で使われる顕微鏡が対象物の上側を観察するのに対し、製造の現場では倒立顕微鏡と呼ばれる対象物の下側を観察する顕微鏡を使うことがあります。

これは、研磨された金属表面を下向きにしてステージに置くだけでその金属を水平にして観察できたり、対物レンジが下側にあるので大きくて重い対象物であってもステージに置けたりといったメリットがあるためです。

デジタルデータで画像を残したり編集したりも可能

製造の現場で使われる顕微鏡のなかには、単に目で確認するだけでなく、デジタルカメラに対応しデジタルデータとして画像を残すことができる製品もあります。

撮影した画像はパソコン上のソフトで編集することも可能で、画像上で長さや面積などを測定したり、線や文字を書いたり、注釈を書き込んだりとさまざまな編集が可能。

チームでの詳細な解析に役立つほか、ノウハウを残すのにも役立つでしょう。

顕微鏡の種類

顕微鏡の種類について解説します。

光学式顕微鏡

光学式顕微鏡とは、複数のレンズによって対象物を大きく拡大して観察するための道具です。倍率は1倍から5,000倍程度まで存在し、さまざまな分野で利用されています。

最近ではレンズに目をつけて観察するのではなく、デジタルカメラのように画像素子を通してデジタル化した画像をモニターなどで観察するデジタル顕微鏡も登場。より手軽に使えるようになっています。

また、光の回折限界を超えて高い解像度の画像を実現する、構造化照明顕微鏡なども登場しています。

電子顕微鏡

光学式顕微鏡は対象物に光を当てて観察する顕微鏡ですが、電子顕微鏡はその名の通り電子を当てて観察する顕微鏡です。

最初の電子顕微鏡は1932年にドイツで開発され、その開発者はノーベル賞を受賞しました。

電子顕微鏡のメリットは、高い分解能です。光学顕微鏡の場合、光を利用しているため可視光線の波長以下の対象物は見ることができません。一般的にはマイクロメートル単位程度のものまでしか見られないとされています(マイクロメートル=1ミリメートルの1000分の1)。

これに対し、電子線の波長は可視光よりも遙かに短いため、より高い分解能で対象物を観察できます。可視光の波長が400〜800ナノメートルnmなのに対し、加速電圧が300kVBのときの電子線の波長は0.00197ナノメートルと、桁違いです(ナノメートル=1マイクロメートルの1000分の1)。

ただ、安定した電子線を作るために高性能な電源が必要だったり、顕微鏡内を真空に保つ装置が必要だったりで、光学式顕微鏡に比べて大がかりな装置が必要となります。

透過電子顕微鏡(TEM)

電子顕微鏡はその方式で2種類に分類されます。1つ目が透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscopey:TEM)です。

この顕微鏡はその名の通り、対象物に電子線を当て、それを透過してきた電子を拡大して観察します。対象物の構造や構成成分の違いによって透過する電子線の密度が変わるため、それが濃淡となって画像となるのです。

透過させることで対象物の内部情報を得られ、結晶・非結晶の判別などに利用されます。

電子線を透過させる都合上、対象物はできるだけ薄くしたり、電子線を透過する薄膜に塗ったりしなくてはなりません。

走査型電子顕微鏡(SEM)

もう1つの方式である走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopey:SEM)は、試料に電子線を当てたときに出てくる二次電子や反射電子を利用して物体を観察する顕微鏡です。

真空中で電子を物体に当てると、二次電子や反射電子が物体から放出されます。二次電子は物体の凹凸に、反射電子は試料の組成によって量が変わるため、物体の詳細な観察が可能です。

また、このとき特性X線も放出されるのですが、これを捉えれば元素分析ができます。元素分析の機能は一般的にはEDSという名称でオプション扱いです。

走査型プローブ顕微鏡(SPM)

走査型プローブ顕微鏡(Scanning Probe Microscope:SPM) は、微小な針(先端の曲率半径が10nm程度)で対象物をなぞることによってその形状や性質を観察する顕微鏡です。

方式としては原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope)と、走査型トンネル顕微鏡(Scanning Tunneling Microscope)があります。
いずれも1980年代に開発された新しい方式であり、3次元的に対象物を観測することが可能です。

レーザー顕微鏡

レーザー顕微鏡は、その名の通りレーザー光を利用した顕微鏡です。対象物にレーザー光を当て、その反射光を測定することで観察をおこないます。

対象物をレーザー光で走査して観察をおこなうことから、分類としては走査型顕微鏡の一種です。

走査方式としては、以前は対象物を乗せたステージを移動させる方式が主流でしたが、最近はレーザーおよび光学系を動かすことで高速かつ精細な像を得られる方式が登場しています。

レーザー光は可視光よりも波長が短く、直進性が高いため、散乱光の少ない反射光を得られ、コントラストの高い像を得ることが可能です。また、共焦点レーザー顕微鏡の場合は対象物の高さを測定できます。

デジタルマイクロスコープ

デジタルスコープは肉眼で対象物を観察するのではなく、デジタルカメラと同じセンサーを用いて観察するタイプの顕微鏡です。

拡大した画像をデジタル化することにより大きな画面に映し出すことで、より快適に観察できます。また、複数人で同時に観察しながら議論するのにも役立つでしょう。

さらに、デジタル化することで画像認識技術を利用した不良検出も可能になります。高速な画像認識装置を利用すれば製造ラインを止めることなく検査できます。

顕微鏡のメリット

顕微鏡を使うメリットを解説します。

金属が破断した原因を解析できる

金属が不意に破断した場合、再発防止の対策を取るためにその原因を解析しなくてはなりません。

金属の破断面には実は模様があり、その模様を解析することで破断した原因を特定できます。ただし、人間の目で見えるレベルではないため、顕微鏡が必要です。

さらに、電子顕微鏡を使えば破断面の凹凸まで観察でき、破断するまでにどれくらいの力がかかったかまで解析可能。より実効性のある対策につなげられます。

表面付着物やコンタミの詳細調査ができる

製品や部品の表面に付着物がついたり、コンタミ(異物混入)が発生したりした場合、顕微鏡で形状などを観察することでその原因を特定できます。

さらに走査電子顕微鏡などで成分分析をおこなえば、混入経路を高い精度で解析できるでしょう。

画像解析ソフトとの連携でより便利に

顕微鏡の世界にもどんどんデジタル技術が導入されています。

もはや画像をデジタルで保存するのは当たり前で、人間の作業を補助するようなソフトが登場しているのです。

たとえば光学式顕微鏡にソフトウェアを組み合わせることで、走査型電子顕微鏡を使わずに異物の定性分析をおこなったり、オートフォーカスや自動検知機能が利用できたりと、アナログとデジタルの組み合わせで時短につなげています。

低倍率・低価格なものも

顕微鏡は高倍率・高解像度なものほどよいわけではありません。高倍率・高解像度になるほど価格やサイズ、重量がアップするため、用途に合ったものを選択することが重要です。

このため、顕微鏡のなかには低倍率・低価格を売りにしているものがあり、手軽に導入できます。低倍率なものは重量も軽く、簡単に移動できるのもメリットです。

卓上で使えるサイズの走査型電子顕微鏡も

かつては大型の装置が必要だった走査型電子顕微鏡も最近は小型化され、卓上で使えるサイズのものも登場しています。

小型といってもその性能は本格的で、光学顕微鏡では見えにくいものがはっきりと観察可能です。

また、走査型電子顕微鏡は視野を探すのが大変ですが、光学像で視野を探し、そこから走査型に切り替えられるものもあります。

高性能な顕微鏡がより身近になったといえるでしょう。

活用事例

マイクロスコープによる基板の拡大観測

実装する電子部品や基板が小型化されることで、拡大観察が必要とされています。そんな状況下でデジタルマイクロスコープは、不具合品を出さない為の量産ライン抜き取り検査シーンやはんだ付けの不具合検証シーンなど、幅広く活用されています。
なかには、サンプルを手で動かすことなく、はんだ接点を360°方向から立体動画観察が可能であったり、接着面の形状を3D画像で観察できたりするだけでなく、3D計測による数値での検証可能なものもあったりします。さらに、高低差計測や深さの計測ができるものもあります。

二次電池の評価に

リチウム電池に代表される二次電池の充放電過程における電極表面での反応過程を観測可能です。光学顕微鏡と専用設計の光学観察用窓付き電池断面観察用セルを併用することにより、密閉状態の電池内部ではどのような電気化学反応が起こっているのか観測できます。

レーザー顕微鏡を用いた高分解能な観測

レーザー顕微鏡は、特定波長の光線を対象物に照射し、反射光を測定することで像を得る顕微鏡システムです。特徴は比較的簡単に散乱光を除去できる点で、通常光を用いた光学顕微鏡よりも高いコントラストで像を観測できます。試料を固定したステージをX-Y方向に移動させる方式が従来では主なのに対し、光学系とレーザーヘッドとを制御して高速に観測可能な機種もあります。

質問集

楽な姿勢で観測できる顕微鏡はありますか?

基板検査用に人間工学に基づき設計され、快適な作業ができる顕微鏡があります。
製造現場における出荷検査は多数の製品を全数チェックしなければなりません。そのため、通常の実体顕微鏡では目の疲れなどから効率が下がる可能性があります。そこでこのような装置を使用すれば、リラックスした自然な姿勢で観測できるため簡単に作業できるほか、優れた快適性があるため生産性と品質の向上に役立ちます。「接眼レンズ不要」のこの実体顕微鏡は、3Dの立体感と明るく高解像度の画像であり、医療技術、医療機器、電気通信、航空宇宙、自動車分野などの製造業務において世界中で広く使用されています。

コンパクトな走査電子顕微鏡はありますか?

卓上型の走査電子顕微鏡があります。これまで走査電子顕微鏡というと、振動の少ない1階で基礎のしっかりした場所への設置が基本でした。研究開発はもちろん、品質管理、物品検査といった製造現場と近接した様々な職種で使用されることから、作業効率の向上、操作の簡便性、分析や計測性能の強化が求められてきた結果、卓上で使用でき、AC100Vで稼働、比較的安価な走査電子顕微鏡が開発されました。オプションでEDS(エネルギー分散型X線分光法)による元素分析もできるようにもなっています。

小型で安価な拡大鏡はありますか?

USB充電、スケール付き、重量は数十グラムと非常にコンパクトな設計になっている、LED拡大鏡があります。見たいものに置き、上から覗き込むと10倍に拡大して観察できる拡大鏡です。光源高原は白色LEDのほかに紫外線LEDも搭載されており、植物の観察や紫外線LEDライトに反応する特殊な素材の検査などを行えます。

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